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cyanII 2010/01
1.1なるやうになるでせう、って口癖はムーミンママの声なのでした。 矢野佳津
ムーミンの苦悩を同世代われらに残し、トーベ・ヤンソン逝けり。 もぐら 非条理なる現代、昔の情理もて責めむとしてか、腹膨るなり。 もぐら
3.3消息の墨の濃淡あやしけれ、寄りて手燭の影に見るとき。 奥村和美
うす墨の如くなれども、恋ひ文はプリンタ故障か、単なるエコか。 もぐら パレットにいろいろ色はありつれど、使ふ途をししらぬ学生。 もぐら
4.5ゆふぐれは荒草なびき戦ぎをり。しどろしどろになりてひと日を。 角田純
けふを見ず明日を見むとふさぼり心灼かむ、と夕暮れ残火は赤し。 もぐら 明日見たきゆゑにけふはし見ずなり、と。明日また同じき言訳いはむ。 もぐら
6.7傘をさし少女行きたり。ちかみち、といふ不可思議の時のいりぐち。 木下こう
スーパーへ行く近道、と通れども、あの世への近道誰も通らず。 もぐら 少々の近道、と言ひて狭き道を巨大なる車が馳せ行く愚昧。 もぐら
8.1ひたすらに正午はひとを過ぎてゆく。うすらぐ冬の酸素のなかで。 小林久美子
行列のできるラーメン喰ひしゆゑの遅刻早退、認むべからず。 もぐら 正午なれば少しは温もり増しにけり。独居老人飯抜きの冬。 もぐら
9.7太饂飩買ひにゆくかな。隣縣へ。くりやの平和の煮込みのために。 酒向明美
国境に住みゐるゆゑの税差利得。EUにては少なくなりたり。 もぐら 行列のできるうどんや、と思ひしに国境通過ヴィザ待ちなりけり。 もぐら
10.5心臓はひとつの体にひとつだけ。小学生の時に習った。 渋田育子
心臓が二つあったらどうなるか。血の届かないところができる。 もぐら 心臓は代替出来ず、と言ふものの、他人のを貰ひたがるは多し。 もぐら
11.1移設場所先送りされ瞑想す。否、迷走す、名僧なれども。 服部一行
何処に移す当てもなくして移設移設。不定愁訴のごとく儚し。 もぐら 誘致せむ心はあれど、縁起悪し、触らぬ神に、と盥廻しす。 もぐら
12.5その夜の琵琶湖に映る月。冴えて美しかりき、今し思えば。 藤井靖子
月あり、と思ひかども風ばかりなりけるその夜の竹生島かな。 もぐら 竹生島の月は如何に、と思ひつつ、一泊せむの余裕なかりき。 もぐら
13.10消し去った記憶のかけら、砂の中に拾ふ時、また指先を切る。 矢野佳津
星砂の記憶は観光案内の中のみなれど、虫なほ棲みたり。 もぐら 珊瑚礁に近き浜には星砂の多し、といふは秘伝なりけり。 もぐら
14.1二杯目のラーメンを食む人とゐて、春の話は異界の話。 山吹明日香
塩多く入れたる蕎麦を喰ひしかば、心臓停る如き心地す。 もぐら 塩多く入りたるラーメン、二杯おろか、半杯さへも喰ふことを得ず。 もぐら
15.7美より醜は解する事は難しく、より深く知る事は時なり。 渡辺琴永
見かけのみを美と言ふならば易けれど、内なる美知る、時間を要す。 もぐら 金儲けにならぬやうなら美ではなし、などとふことを常識と言ふ。 もぐら
16.3泣きながら母親雲を追ひかけて、末っ子の雲が窓をよこぎる。 大辻隆弘
水分は空に上らば凝り易し。凝りて再び海へ戻るなり。 もぐら 水分は天空高く漂へど、一向地上に降るる気配なし。 もぐら
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